若さに任せて登りまくってきた著者の結論は、山は高さではなく、静かさだということだ。彼を惹いてやまないのは、原始の香り漂う清浄無垢な山の自然である。そういう山には、いきおい雪の洗礼が必須で、ハイマツも欲しい。これら二つは山の厳しさ、ひいては美しさの象徴だから。すなわち、中部山岳以北、東北・北海道、しかも日本海側の山となる。紀行38編は、山への恋文のアンソロジー。ただ登って終わりでなく、真に自分の山を求める人の必読の一冊。
1934年埼玉県の田舎に生まれる。1956年東京教育大学(現筑波大学)卒業。以後1994年まで県立高等学校の英語および書道担当教員。その間、川越高等学校において10年余り山岳部顧問を務める。県美術展覧会に山岳写真を出品、特選二回受賞。個展二回開催。1947年から40年余りにわたって書家の父春川の芭蕉さながらの書道行脚の助手として国内津々浦々を訪ね、自然観照の眼を養う。山登りは就職と同時に始め、静かな山が好み。厳冬期玉山、アラスカのチュガッチ山群にも遠征。日本山岳会会員番号五八七三。著書は『わが山路』『山おちこち』のほか、書関係に『春川の書』『奈良平安の落葉』がある。先祖から埼玉県東松山市下青鳥に居着く。
© 2015 Hakusan Shobo Co., Ltd. All rights reserved.